■ 君のあしあと Last Update:2009/06/01
誕生日前に何が欲しいのかさり気なく聞いてくるフェイトちゃん。
けれど、ウィンドウショッピングで「それ気に入ったの?」と嬉々として聞いてくる姿はちっともさり気なくない。
――考えている事丸分かりやでフェイトちゃん。
呆れつつ「そうやねー」と曖昧に相槌を打つとフェイトちゃんの姿が消えて、気がつけば店員さんの所に。先程まで見ていた鞄さんはフェイトちゃんの手によってきっと「ご予約」されたに違いない。私は溜息混じりに苦笑する。
毎年、私の誕生日にはプレゼントが山のように贈られてくる。
主にフェイトちゃんから――。
ひとつに絞るように毎回言うのだが、聞き入れて貰えない。
フェイトちゃん曰く「はやてがこの中から一番を選んでくれるのが嬉しい」らしい。
おかげで誕生日には家の中がどこぞの外国のクリスマスか!という風景になってしまう。
――別に物とかそういうんが欲しいんとちゃうんやけど。
鈍感なフェイトちゃんはきっと今年も分かってくれないだろう。
どんな物を誰から貰っても、フェイトちゃんがくれた物と比べれば例え石ころだって宝物になる事を。けれど、強くフェイトちゃんを止められないのは私の誕生日をフェイトちゃんが心底楽しみにしているから。
毎年、プレゼントに悩んで。私が気に入るかどうかで不安いっぱいな顔をしながらレストランや色々な所へエスコートしてくれる。普段は格好いいフェイトちゃんが百面相をして悩んだり笑ったりする。私はそんな姿を見るのが嬉しい。
私だけに見せてくれる表情だと思うから。
ぼんやりとガラスケースを眺めながら「私も甘いな」と反省しているとフェイトちゃんが隣に戻ってきた。戻ってきたフェイトちゃんはニコニコ顔で嬉しそうだ。
誕生日に渡すものが増えて嬉しいのだろう。
「フェイトちゃん、そんなに一生懸命にしなくても私は一緒に居られるだけで……その……幸せなんやけど」
恥ずかしさに声が段々小さくなってしまったけれど、フェイトちゃんの手を握って伝える。
「……うん……私も一緒なだけで幸せだよ」
そう言って握り返されたフェイトちゃんの手は温かかった。
「でも、もっと……はやてに幸せをあげたいから……この世で一番幸せな人にしたいから」
顔を赤くしながら紡ぐ声は少し震えていた。
「誕生日は……その……特別だから。きっと二人で居られる事は奇跡みたいな確率だから……いっぱいお祝いしたいんだ」
照れたように微笑むフェイトちゃん。
誕生日は生まれた事だけをお祝いするわけじゃない。
今まで歩いてきた道や今を振り返る日。
家族を失って、新しい家族と出会って――大好きな人が出来た今。
その、ひとつひとつの出来事は奇跡のような確立の連続。
生まれなければ始まらなかった奇跡。
6月4日の奇跡。
