誕生日に欲しいモノ
六月四日。
この日の朝、八神家では沈黙が続く状況に戸惑うはやてと、既に三十分近く悩むシグナム達がいた。
「別に、そこまで深く考えなくても・・いつもよりおいしいごはんをみんなで食べる。では駄目なんか?」
そう、はやては声をかける。
この日は騎士達の主、八神はやての記念すべき誕生日なのだが、最近、管理局の仕事が忙しく。その事を昨日の夜まで忘れていた。
その為、シグナム達は今朝からプレゼントをどうしようかと考えていた。
「ですが、折角の誕生日ですから・・。」
「そうだ。はやての願いなら何でも叶えてやるからさ!」
「私もですよ、はやてちゃん。」
三人は、それぞれに訴える。
傍で獣化したザフィーラも同感だ。と言うように頷く。
(・・どないしよ?)
思わず苦笑いするはやてに、一つの案が浮かんだ。
「・・分かった。じゃ、一つだけ願いを聞いてな?」
その声に、シグナムが反応する。
「何でしょう?」
「一日、自分がやりたいと思うことをやって。」
その言葉に、騎士達は呆気にとられた。
「それって・・いつもやってるじゃん!」
先に、ヴィータがツッコミを入れる。
「でも、私の願いなら何でも聞くっていったやろ?」
はやての指摘に、ヴィータは何も答えられない。
「ですが・・本当にいいのですか?」
「ええよ。私はみんなが普通に楽しくやっているのが私に取っては幸せやし。」
「はやてちゃん・・。」
はやての言葉に、思わず涙ぐむシャマル。
「ちょ、別に泣かんでもええやん!?」
「シャマル! 主が困っているぞ。」
「・・ごめんなさい。」
そんなやり取りの中、ヴィータが目を輝かせながらはやてに迫る。
「じ、じゃあ・・アイスたくさん食べてもいいのか!?」
「それはアカン。」
「だよな・・。」
はやての注意にヴィータが項垂れた。
「てな訳で、これで解散!!」
解散して一時間後。
騎士達は最初、思い思いに過ごしていたが。ヴィータがはやてに近づいてきた。
「なぁ、はやて。」
「ん?」
「やっぱ、何かやりたい事とかないかなぁ?」
ヴィータは何もできないのがもどかしいのか、ウズウズしながら言う。
「そんなに気ぃ使わんでええよ?」
「でも、アタシは何かしてあげたいんだよ・・。」
「・・・そっか。」
そこまで慕ってくれているみんなが、とても嬉しかった。
独りだった頃は、こんな風に過ごしているとは思ってもいなかっただろうな。と思わず笑う。
だから。
「じゃ、今甘いものが食べたいな〜。」
「なら、はやてもアイス食べるか!?」
「アイスやなくて、他のモノがええな。」
と、シャマルに意図的な視線を向ける。
「分りました!」
と、シャマルはその視線の意味を読みとったように買い物へと出かけた。
「主、私は・・。」
「・・何でもええんやな?」
と、手を怪しく動かしながら迫るはやて。
その様子から恐怖を感じたシグナムは後ずさる。
「む、胸はご勘弁を・・。」
「それは・・無理やぁぁぁ!!」
そして、シグナムの悲鳴が響いた。
(シグナム、ドンマイ。)
と、悲鳴を聞きながらヴィータは心の中で手を合わせた。
その後、八神家では美味しそうに一足早く誕生日ケーキを食べた。
(みんな、ありがとな。)
これからもこうやって過ごしていきたい。
そう願いながら、はやては微笑んだ。
end