「ヴァイス。ちょっと顔貸せ」
「何すか、ヴィータさん?」
その一言でついて行ったヴァイスは……
「ヴィータさん、なんで俺はバインドされてるんでしょう?」
「それはシグナムを孕ませたからだ」
管理局の屋上にあるポールにバインドで縛り付けられていた。
「ちょっ、孕ましたって、いくらなんでも酷くないですか。俺はシグナムの夫ですよ?やることやってたら出来るでしょう」
「だからだ。地球では子供が出来た時、夫は妻の家族から『男の試練』って言うのが与えられるんだよ」
「何つー儀式ですか!」
「うるせぇ。ユーノはなのはが妊娠した時、なのはの兄ちゃんにやられたって言ってたから、お前もつべこべ言わず受けやがれ」
そう言うと、ヴィータはグラーフアイゼンを振りかぶる。
「ちょっ、それはさすがに死……」
「仮にもヴォルケンリッター・烈火の将の伴侶なんだろ。これぐらい軽く受け止めろよぉぉぉぉぉっ」
普段のギガントフォームよりさらにデカいうえ、横っちょに『ご祝儀サイズ』とか書いてあるグラーフアイゼンがヴァイス
目掛けて迫って来る。
シグナム、そして産まれてくる自分ととシグナムとの子供にすまないと心の中で謝りながら、ヴァイスはやってくるであろう衝
撃に備えて目を閉じ、歯を食いしばる。
しかし、いつまでたっても衝撃は来なかった。
「ふぅ、ギリギリ間に合うたな」
その声にヴァイスは目を開けると、視界には胸から手を生やしながら、屋上のタイルにひっくり返っているヴィータと、額の汗
を拭うはやての姿があった。
「シャマル、もうええで。まったくヴィータは。あんだけ高町家は特殊やって言うてるのに」
はやてが何事か詠唱すると、それまでヴァイスを縛り付けていたバインドが解除され、ヴァイスはポールに繋がっているロープ
を掴んでゆっくり下へ降りる。
「悪かったな」
「いやいや、助かりましたよ。さすがに子供の顔を見るまで死ねないですから」
「ははは、そうやね。私も早よ見たいからな。ヴァイスくんとシグナムの子供って言ってら、私にとったらお姉ちゃんの子供みた
いなもんやからな」
「そんなもんっすか?」
「うん、そんな感じや。だから、余計に生まれてくる子供の幸せを願うんやろうな。私は早くに両親を失のうたから、生まれてく
る子には両親の温もりをしっかり感じて欲しいんや。まぁ、それ以上にみんなから友情やら愛情やらもろてるけどな。それに、
シグナムにはヴァイスくんと結婚した時にも言うたんやけど、今までのマイナスの思い出をどんどんプラスの思い出に変えてっ
て欲しいって思おてるんや」
そう言って、はやては笑う。
「そうですね。シグナムはまじめなのが長所であり、短所だから。もちろん、過去のことは忘れちゃいけないけど、囚われてもい
けないと思うんですけどね」
妹の眼を誤射してしまうという過去の囚われていたのを振り切って、再びライフルを手にしたヴァイスの言葉に、はやてはうな
ずく。
「そやな。そう言いながら、どうしても過去に囚われてしまうんがうちらの性(さが)なんやろうけどな」
はやての言葉に、今度はヴァイスがうなずく。
「さてと、そろそろシグナムもリンディさんから解放されるだろうから、迎えにいこか」
「そうっすね。あっ、ヴィータさんは……」
「ほっとき。悪いことした罰や」
そう言うと、はやては階段を下りて行く。
「あとでザフィーラの旦那に来てもらいますから」
そう言うと、ヴァイスははやての後を追いかけて階段を下りて行った。